2015年11月26日木曜日

黄金のアデーレ  名画の帰還

号泣してしまった…
でも、泣くために観る映画ではありません。

『黄金のアデーレ 名画の帰還』



まず、始まりが美しい。
この美しいシーンから始まるからこそ、
泣くに至ったのかもしれない。

美しいインテリア、服、ふるまい。

けれども、時代は、
ヒトが本来なら全力で遠ざけたいはずの
「恐怖」の方向へ突き進んでゆく。
では、引き換えに「美」は不要となったのか。

そうではない。

「美」は、別の用途のために必要とされたのだ。
ダイナマイトが、発明者の意図通りには用いられなかったように。

その「美」を、本来の「美」として輝かせるために動き出した人々が、
自らの「美」も取り戻していく。
それは、人生であり、心意気であり、自分の大切な人たちの思いであり、
さらに、新たに紡ぎ出される「美」にも繋がっていく。
その象徴となっていたのが、クリムトの『アデーレ』。

それにしても、ヒトは、何度同じ愚かな間違いを繰り返すのか。

誰かを支配することはできても、心は支配できない。
命をちらつかせ、時には奪うようなマネをしたところで、
支配などできない。支配したところで、憎しみを生むだけではないのか。
異なる考えを、新しい価値観に転換する作業に繋げられないものなのか。

ところで、『黄金のアデーレ』のチラシの製作クレジットには、
「アメリカ・イギリス」と記されている。
同じテーマで、オーストリアで映画を作ったなら…
オーストリアの監督・脚本家が手がけたなら…
どんな作品になったのだろうと思う。

シネマ・クレールにて、11/27から公開!

『黄金のアデーレ』公式サイト 



クリムトといえば『接吻』を間近で見た
浅田真央さんが漏らした感想が印象的だった。
この女性は、キスされて、花のような気持ちになって…
と。
その感想を聞いて、このような感受性があるからこそ、
彼女のスケートは素晴らしいのだと、
彼女のコメントに涙が出たことを思い出した。

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