でも、泣くために観る映画ではありません。
『黄金のアデーレ 名画の帰還』
まず、始まりが美しい。
この美しいシーンから始まるからこそ、
泣くに至ったのかもしれない。
美しいインテリア、服、ふるまい。
けれども、時代は、
ヒトが本来なら全力で遠ざけたいはずの
「恐怖」の方向へ突き進んでゆく。
では、引き換えに「美」は不要となったのか。
そうではない。
「美」は、別の用途のために必要とされたのだ。
ダイナマイトが、発明者の意図通りには用いられなかったように。
その「美」を、本来の「美」として輝かせるために動き出した人々が、
自らの「美」も取り戻していく。
それは、人生であり、心意気であり、自分の大切な人たちの思いであり、
さらに、新たに紡ぎ出される「美」にも繋がっていく。
その象徴となっていたのが、クリムトの『アデーレ』。
それにしても、ヒトは、何度同じ愚かな間違いを繰り返すのか。
誰かを支配することはできても、心は支配できない。
命をちらつかせ、時には奪うようなマネをしたところで、
支配などできない。支配したところで、憎しみを生むだけではないのか。
異なる考えを、新しい価値観に転換する作業に繋げられないものなのか。
ところで、『黄金のアデーレ』のチラシの製作クレジットには、
「アメリカ・イギリス」と記されている。
同じテーマで、オーストリアで映画を作ったなら…
オーストリアの監督・脚本家が手がけたなら…
どんな作品になったのだろうと思う。
シネマ・クレールにて、11/27から公開!
『黄金のアデーレ』公式サイト *
クリムトといえば『接吻』を間近で見た
浅田真央さんが漏らした感想が印象的だった。
この女性は、キスされて、花のような気持ちになって…
と。
その感想を聞いて、このような感受性があるからこそ、
彼女のスケートは素晴らしいのだと、
彼女のコメントに涙が出たことを思い出した。
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